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基礎知識床の間の構え

◎床の間は格式の高い方から、「真」「行」「草」の三つの構えに分類される。
◎南向きか東向きに造るのが一般的。
◎床の間の飾り方はポイントを絞るのが原則。

床の間の見せ所

「行」「草」の床の間に数多くの飾りはかえって邪魔になります。草・木・土・紙など簡素な自然の素材で構成された床の間では、その床の間そのものの構成美とそこに飾られる書画・美術工芸品・四季折々の花によって空間が演出されます。

その場合、飾るものはあくまでも閑静・上品・シンプルを旨としてポイントを絞るのが原則です。さらに、季節を感じさせる飾りつけがよいでしょう。床の間は主人のもてなしの気持ちが表現される場でもあります。

床の間の向き

床の間は南向き(北床)か東向き(西床)に配置するのが普通です。客人を北向き、西向きに座らせない配慮ですが、「君子南面す」「北面の武士」などの言葉に見られる中国の易経の影響も強いと思われます。冬の寒い北風を防ぎ、夏の蒸し暑い西日を遮る効果もあります。

床の間・床脇・書院の配置は、左側に庭に面した書院、庭から遠い右側に床脇が来るものを本床(本勝手)と呼びます。その逆に床の間に向かって書院が右側にあり、床脇が左側にあるものを逆床(逆勝手床・陰床・下座床)と呼びます。

草の構え(数寄屋・小間・小座敷)

厳格な決まりや格式といった堅苦しさを捨て風雅で自由な中に、侘び心と穏やかで素朴な表情を大切にした構えです。

踏込床・蹴込床・蹴上床などのかたちの床地板や床框が多く見られます。また、簡素な織部床(壁床)・洞床(龕破床)・釣り床・枡床・置床などで小座敷を構成します。1.5畳台目・2畳台目・3畳・4.5畳・6畳などの茶室・小和室や玄関や畳コーナーを構成することもあります。

床柱には名栗や丸太の面皮材がよく使われます。野趣の味わいの材料を上手に使って、風雅に設えたいものです。

真の構え

身分格式による厳格な決まりにもとづく伝統的な書院座敷の床の間です。本格的な上段床をもつ真の構えは、二条城二の丸御殿黒書院・西本願寺白書院紫明の間・曼珠院小書院黄昏の間など、歴史的な建築物にしかありませんが、最近は表千家の残月床を代表に、現代風にアレンジされた上段床の形式をとった数寄屋風書院座敷が多く造られています。

厳格な真の構えでは床の天井は一枚板の鏡天井。座敷の天井は格天井が正式ですが、現在は竿縁天井が大半です。壁に長押がまわされ、床の間の間口は一間以上、床脇を含め一間半以上、奥行が半間以上で、框があり付書院・床脇、まれには帳台構えなどの座敷飾りがついています。

「真」「行」「草」の構え

床の間には、最も厳格な決まりにもとづいてつくられた「真」の構えと、やや崩した数寄屋書院風の「行」の構え、自由で閑寂な茶室風の「草」の構えの三つの構えがあります。ただ、厳格な分類ではなく相対的なものともいえます。

「真」「行」「草」はもともと書道における漢字書体である真書・行書・草書から来ています。真は楷書、草は風雅な草書で、行はその中間です。この概念が床の間に持ち込まれ、その簡素化の度合いによって「真」「行」「草」の三つの構えで表現されています。