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基礎知識床の間に使う木材

床框

呂色(黒)漆塗り
檜などに寒冷沙(布)を張り、生漆と研の粉などを混ぜて下塗りして、生漆を塗りながら水研ぎを繰り返し、最後に呂(黒)色塗りを何回も重ねながら磨いて仕上げたものである。

杉面皮呂色漆またはカシュー塗り
床框の上端に大面をとり、そこに杉の面皮を張り、面皮以外の部分は呂色漆塗りや黒カシュー塗りで仕上げたもの。

杉面皮呂色漆塗り艶消し(潤色)仕上げ
杉面皮呂色漆塗りに本朱粉を配合し、呂色塗りより漆の黒さの艶を消したもの。

杉面皮春慶漆塗り
杉面皮に春慶漆を塗ったもの。

ケヤキ漆塗り仕上げ
ケヤキや檜・杉などの表面に透明な生漆を塗り込んでは拭き取ることを繰り返し仕上げたもの。

鉄刀木 (タガヤサン)
東南アジアに産する豆科の木。材質が非常に硬く、重い。床回りの材としてよく使われる。紫黒色〜黒褐色で材質緻密。淡い黄茶色に黒い縞筋があり、磨くと光沢が出る。同種で普通の紫鉄刀木があるが、普通のものより色が濃く黒い杢目が特長。

楓杢色付け
杢目の美しい楓の表面に生漆やポリウレタン・木ロウなどを塗ったもの。

杉太鼓落とし
磨丸太の表面を生かし、三方を平らに削ったもの。

面皮丸太
無節の杉磨丸太の四隅面を残し、四面を平らにはつって美しい杢目を浮きだたせたもの。

栗六角突のみ
栗の丸太材の表面を六角形にやや粗くはつって美しい杢目を浮きだたせたもの。手作業によるものは名栗。機械によるものは突のみ。床柱にも使われる。

落掛


白黄色で磨くと銀白色の光沢が出る。年数が経っても木目が薄くならず、国産材では最も軽い。木目がくっきりして揃っている南部桐と、木目に変化がありやや硬く銀色の輝きがある会津桐が有名。アメリカ桐や台湾桐も使われる。


現在、落掛に最も多く使われている日本の代表的な樹種。鳥の羽に似た鶉(ウズラ)杢や雉(キジ)杢が美しい屋久杉、美しい笹杢で知られる春日杉、緻密な肌目の霧島杉、男性的な力強い杢目が特徴的な土佐杉、木目の通直性と細かさで節の無い広い板が取れる秋田杉などがある。
 なお現在、天然の屋久杉は伐採が禁止されている。また、春日杉もほとんど伐採できず、わずかな倒木が市場に出る程度である。

床柱・床框・落掛

床柱

▼丸太材


京都北山杉が最高とされ、奈良の吉野杉がこれに次ぐ。磨丸太の方がやや安価。天然物の絞丸太は非常に高価なため、現在では人工(生育中の幹に箸状のあて木を巻き付けてつくる)のものが大半。絞丸太は出絞りと入絞りがある。


樹皮を剥いで、林の中に立てかけ、菌を発生させ、ごまを振りかけたような黒い斑点を出したのが錆丸太。その出節をそのまま生かしたのが錆アテ丸太。

赤松
素朴で枯れた味わいの中に、古雅で気品あふれる。皮付き丸太は小間の床柱として人気が高い。天然物は少なく、人工物がほとんど。


中曲がり丸太 皮付き丸太桜の皮の光沢ある赤紫褐色が高貴な雰囲気を漂わせ、部屋のアクセ
ントにも。

香節 (コブシ)
青みがかった灰白色の木肌に灰緑色の大きな斑点があり、素朴で枯れた風雅さがある。表面の皮は伐採時期を誤ると剥がれてしまう。

椿 (ツバキ)
地が灰褐色。素朴で野趣味あふれた材。皮肌は固く細かい手ざわりがある。

百日紅 (サルスベリ)
椿に似ているが木肌はやや薄赤茶色で、灰緑色の雲紋状の斑点があるものと、木肌が濃い赤茶色で斑点が薄黄色の2種類がある。

南天 (ナンテン)
灰褐色の地に白い斑点。磨くと濃い茶褐色の磨丸太に変わる。


赤茶色の上品で枯れた感じ。通直材はまれで曲がった節物が大半。


檜の節をそのまま生かして皮を剥ぎ磨いた丸太。白黄色の木に、節の芯材部分の茶褐色がアクセントになる。

槙 (マキ)
和歌山県高野山に多いので、高野槙とも呼ばれる。檜の出節に似ているが、もっとごつごつした感じで面白い。


自然の風化で濃淡の付いた、天然の模様を丁寧に磨き上げたもの。

榁 (ムロ)
木がねじれたような感じで、イチイのように茶褐色と白色のコントラストが面白く、節と枝と斑紋が雅緻に富む。ねずみさしとも呼ばれる。

ツツジ
自然乾燥させて磨いて仕上げる。ねじれたような凹凸ある樹幹が特徴で、茶褐色に淡褐色の細かい斑点が面白い。

▼竹類

孟宗竹 (モウソウチク)
日本国内にも数多く生育する。竹の皮が赤茶色で真竹より厚く、大型の竹。写真は晒竹。

亀甲竹 (キッコウチク)
孟宗竹の変種で、節の間が交互に膨れ、亀の甲羅のような形をしているためその名がある。

雲紋竹 (ウンモンチク)
竹かん(幹)に菌や黴により褐色の斑点が出来たもの。筍から成長して3年目のものが一番斑点が美
しいといわれる。

胡麻竹 (ゴマダケ)
錆竹とも呼ばれる。自然の菌が寄生し黒胡麻を散らしたようになった竹。淡竹(破竹)が開花して、胡麻竹になったものもある。

皺竹 (シボチク)
真竹の一種。節の間に縦皺が生じた竹。

煤竹 (ススダケ)
真竹・孟宗竹などを屋根の下地や構造材に使い、長年炭や囲炉裏の煙で燻され煤が付着し、茶褐色や紫褐色に染まったもの。最近では人工的に作られたものもある。

晒竹(サラシダケ)
竹桿(かん)を砂と籾殻を混ぜたもので磨き天日に干したもの。

寅竹 (トラダケ)
人工竹。

図面竹 (ズメンチク)
孟宗竹などの表面に希硫酸を粘土に混入したものを塗り、斑紋を付けたもの。

床柱

檜 (ヒノキ)
緻密で狂いがなく、まっすぐ通った木目と光沢のある表面が美しい。絹糸のように滑らかで、香りもよく、清楚で気品がある。あらゆる性能に優れており、最高の材料といわれる。

赤杉
一般に杉の芯材は淡い紅色をしているが、特に赤味の強いものを赤杉と呼ぶ。変色が少なく上品。床柱には柾目材が多用されるが、銘木の前杢目も美しく、数寄屋書院の床柱に向く。

黒神代杉(くろじんだいすぎ)
有史以前の火山爆発で地中に埋もれていた杉で現在はほとんど入手不可能な貴重材。黒神代杉と、茶神代杉がある。米杉に薬品処理して神代杉のように見せかけた染め神代杉もある。

栂 (ツガ)
木目がまっすぐでヒノキより明瞭。材質が硬く大工泣かせの木と言われるが、人気は根強く特に関西で好まれる。


床柱では最も格式が高く杢目が独特で美しい。四方柾目、日向松、霧島松を代表とする杢目が床柱にはよく使われる。

天然唐松
別名 信州赤松。直径60㎝以上のものが銘木と呼ばれる。両側が緻密な柾目、中が杢目(中杢)の材は、現在では幻の銘木と呼ばれている。

一位 (イチイ)
アララギの名でも知られる。他の針葉樹とは異なり、木目よりも淡い黄白色の辺材と紅褐色の芯材を対比させ、2色のコントラストの面白さを生かす。名前から縁起柱としても使われる。床柱のほか落とし掛けにも使われる。

槐(エンジュ)
イチイに似たツートンカラーの材で、落とし掛けにも使われる。芯材が濃い紫褐色、辺材が黄白色で、木肌は粗いが、木目が交差して美しい。磨くと杢目がはっきりと表れ、光沢も増す。紫檀の模擬材としても使われる。中国や韓国からの輸入物が増えている。

楓 (カエデ)
別名モミジ。芯材は桃灰色〜淡い桃褐色、辺材は白桃色。木肌が絹のように滑らか。縮杢・波状杢・鳥眼杢・蟹杢など独特の美しい杢目と光沢を持ち、風雅でしゃれた感じ。昔は床回りに幅広く使われたが、最近は使用頻度が減っている。

欅 (ケヤキ)
広葉樹の代表。木肌は粗いが、優れた耐久性、硬さ、木目の通直性、磨くと光沢が出ることなどから、社寺仏閣などの重要な建物に多く使われてきた。最近では貴重材。

黒柿
淡黄白色の地に黒〜黒褐色の独特の縞模様と黒緑色の光沢ある孔雀模様を持ち、木目も通直で肌も緻密。床柱のほか床框に珍重される高級材。国産より縞模様がややぼやけたタイ柿(シャム)も独特の風合いがある。

紫檀 (シタン)
南洋に産する豆科の木。木目は交差して美しく、肌目が緻密で、高級感あふれる素材。写真は本紫檀より縞模様がはっきりしている手違い紫檀。

黒檀(コクタン)
南洋に産するカキノキ科の木。木目が通り、高級感のある美しい光沢が特徴。色や模様により4種類
に大別される。写真は縞黒檀。

花櫚 (カリン)
東南アジア一帯に植生するマメ科の木。肌目はやや粗く、木目が複雑に交差している。縦断面では濃淡の縞が美しく、高級感のある仕上がりになる。唐木の中では比較的安価で、紫檀・黒檀の代替材として、床柱を主に床回り全般的に使われる。漆を塗って仕上げる例が多い。写真は縮杢。赤褐色で美しい杢目が特長。

ウェンジ
西アフリカ、ナイジェリア、ザイールに産する。縞模様が明瞭で、茶神代杉のような味わいがあり、床柱のほか床框にも使われる。

ブビンガ
アフリカのナイジェリア・カメルーン・ガボン・ザイールに産し、ローズウッドの縞模様をもっと細かくし、カリンや黒松の前杢、波状杢、縮杢、玉杢のような独特の杢目が特長。床柱のほか床框にも使われる。

月桂樹
インド・ミャンマーに産し、紫鉄刀木に似た杢目が面白く紫褐色〜黒紫色の美しい縞を持つ。家具や装飾、内装用の木だが、床柱や床框にも使われる。蓄積量も多い。