床の間の意味を考える
現代では床の間を設ける住宅は 少なくなっています。しかし、和風住宅の真髄を知り、その本来の姿に近づきたいと思うなら床の間を設けるのがよいでしょう。床の間と一口にいってもさまざまなかたちがあり、簡易なものもありますので事情に応じて考えることが できます。
床の間の起源は、貴族社会・武家社会では貴重品を飾り、また高貴な人の座る場でした。一方、仏教との結びつきでは、学び・敬い・祀るといった精神的な意味合いが深く、静かに自己を振り返る場でもあったようです。
こうしたことから現代につながる床の間では、四季それぞれの行 祭事・礼儀作法を具現化しながら、もてなしと求道の心を表現する場といっていいでしょう。本格的な「真」の構えの上段床では、豪華で立派で「結構」な格式高い様式が重視されました。し かし、「行」「草」の数寄屋風書院や数寄屋では、いたずらに派手な演出を避けています。床の間は一種の精神的な空間であり、四季の行祭事と伝統を受け継ぐシンボルゾ ーンとして認識されているからです。
簡素な中に一軸の文字や絵、一 点の飾り物、花一輪を浮かび上がらせることにより、心を落ち着かせ、清閑で厳粛な世界を生み出すのです。